Secret of B - 1 Grandprix

B-1グランプリの出展者は、自分たちのまちの良さをに来場者知ってもらい、
いつか地元に行きたいと思っていただくために工夫を凝らし、自慢の味を提供することを考えています。
さらに、いかに地元を知ってもらうか、並んでいる人にどのようなおもてなしをするかを、一生懸命に考えた出展者が結果を得ています。

グルメイベントは数十年前から各地で開催されていますが、食を提供するイベントとしてなぜB-1グランプリがこれほどまでに大きくなったのでしょうか。
「グルメイベントではなくまちおこしイベントである」というB-1グランプリが短期間に大きく知名度を上げた理由と考えられるもののうち、ここでは以下の3つの点についてご紹介します。

・B-1グランプリは広告宣伝費を持っていない
・B-1グランプリは箸の投票でまちおこし団体のグランプリを決める
・B-1グランプリ出展では上位に入らなくとも現地への来訪者が増える

1. B-1グランプリは広告宣伝費を持っていない

ポスター、チラシ、ガイドブックなどは作成しますが、一般的に広告宣伝には莫大なお金がかかります。B-1グランプリは2006年2月に青森県八戸市で第一回大会が開催されましたが、知名度も全くなかった当時は手作りで開催し、1万7000人の来場者がありました。

今でこそ地方に数十万人を集めるイベントになりましたが、真冬の極寒の八戸に、やきそばやおでん、焼鳥といった庶民的で誰でも知っているような食べ物に、当時地方独特の特徴があることなど知られていなかった時期に、北海道から九州までのまちおこし団体が集まったとは言うものの、2日間で1万7000人もの来場者は大成功と言えるものでした。

第1回の大会は一部で話題になりましたが、決して全国的なイベントといえるまでにはなっていません。第2回の富士宮大会で、2日間で25万人を集め、地方で莫大な集客を誇ったイベントとして大きく注目されることになります。

この時B-1グランプリの告知のためだけではなく、富士宮やきそば学会という、多くの愛Bリーグ加盟団体の活動の範となり、原点でもある日常的なまちおこし活動のPRで、B-1グランプリの開催をおよそ1年間かけて告知した結果、25万人の来場に結び付いたのです。

富士宮やきそば学会の取り組みは、全国への発信もありましたが、主に県内で取り上げられていたことで来場者の9割は静岡県からの方々でした。昨今のB-1グランプリ全国大会でも8割から9割地元もしくは近隣の県で占められます。最近では開催地のメディアでは、直近でB-1グランプリを取り上げていただけますが、B-1グランプリの大きな集客は日常的な情報発信と密接な関係があるのです。

またここ数年では、開催地の団体だけではなく、B-1グランプリに出展する加盟団体も各地でまちおこし活動の情報発信とともに、B-1グランプリのPRを行います。主催者としてB-1グランプリを盛り上げるという意識があるからですが、全国各地の地元メディアで取り上げていただいた記事がインターネットもにぎわします。開催地だけではなく、全国各地から情報発信されることが、継続的に知名度を上げてきたのでしょう。

ちなみにB-1グランプリの出展団体はまちおこし団体であり、日常活動をしているからメディアの皆さんからも応援いただけるのだと思いますが、グルメイベントで出店者が事業者であれば、おそらく繰り返し取り上げていただくのは難しいでしょう。

広告宣伝費を持たないのはもともとお金がないから広告できなかったのですが、広告に頼ることなく情報発信をするというのはお金がなくともできるはずのまちおこし活動の原点だと考えています。各地の日常活動を頑張っている愛Bリーグの仲間と、それを応援していただけるメディアの皆さんの力で、地方から日本を元気にしようという理念のB-1グランプリというイベントは大きく成長してこられたのだと思います。

2. B-1グランプリは箸の投票でまちおこし団体のグランプリを決める

B-1グランプリは来場者による箸の投票でグランプリが決まります。来場者が参加して順位を決めることで注目が高まったのは事実ですが、もし単に料理の順位を決めるだけのイベントであれば、過去にもありましたし、これほど大きくなることもなければ、数年で飽きられてしまったことでしょう。

B-1グランプリは共同PRイベントであり、出展団体は主催者という考え方なので、出展団体同士はライバルではなく仲間です。せっかく集まった各地の仲間が注目してもらうために、遊び心で箸の投票を行ったのですが、きっかけは実は確実にごみの回収をするためでした。

まちおこしの仲間が各地に戻ってもお互いに頑張り、年に一度はいずれかの仲間の地元に集まって、地元を盛り上げるとともに懇親を深めようという考えから、表彰はまちおこし団体に対しておこないました。提供した料理ではなく出展した団体を表彰するという発想が、その後のB-1グランプリを盛り上げる原動力となる、来場者へのおもてなし、まちのPRにつながっていくのです。

また開催地は八戸をご当地グルメの聖地化するのではなく、持ち回り開催を決めました。こうした考え方が、料理コンテスト的なグルメイベントと一線を画し、急成長を遂げた現在のB-1グランプリの原点なのです。

第1回八戸大会で全国から10の食のまちおこし団体が自慢のご当地グルメを持ちより、各地でまちおこし活動をする仲間として懇親を深め、愛Bリーグという全国組織の設立につながっていきます。

さて各まちおこし団体はかなりのスピードで、おいしく安全に料理を提供するノウハウを持っていますが、それでも多くの行列で待っていただく方が出てしまいます。B-1グランプリに来られたことのない方は、一般のグルメイベントのように呼び込みを一生懸命やっているイメージがあるかもしれませんが、実は並んでいただいている方々に対して、さまざまなパフォーマンスをしています。

共同PRによって現地に来てもらうことを目的としているのに、長時間の行列に並ばれる方に不満を持たれてしまっては、そもそも何のためにB-1グランプリをやっているのかわからない。そう考えた団体さんが並んでいる人が退屈しないようにと考えたのが、会場の行列に向けたパフォーマンスのきっかけです。

投票で上位になる団体さんは、もちろん自慢のご当地グルメを提供しています。しかし投票の理由のアンケートをとってみると、多くの方が気に入った味、好みの味で投票しますが、箸の投票は一人一膳2票で、味以外の理由で投票される方が2~3割います。

味以外の理由では「頑張っているようなので応援で」「並んでいるときのパフォーマンスがよかった」「対応が丁寧で心地よかった」「今日は食べてないけど地元出身なので」といった理由が、最終的に上位団体を決定しているようです。おいしくなければ上位になりませんが、おいしいだけでは上位になれないということなのでしょう。これがまちおこしイベントといわれるゆえんです。

3. B-1グランプリ出展では上位に入らなくとも現地への来訪者が増える

B-1グランプリでは順位の発表は10位までです。共同PRイベントであり出展者は主催者でもあるとはいえ、上位になった影響力を考えれば、上位を目指すのは当然のこととみられている方が多いと思います。しかし上位になった団体さんは、上位になることを目指した出展を考えすぎると、不思議と上位にはなれないといいます。

特に料理の味だけのこだわりが強すぎると、かえって結果につながらないようです。投票される方々は多くの団体さんのブースを見ていますので、その空気感のようなものが伝わるのかもしれません。全ての出展者が味の勝負をしているのであれば、おいしいところが優勝するのでしょう。しかしB-1グランプリの箸の投票はそうではないようです。

自分たちのまちの良さを、並んでくれている人、自慢のご当地グルメを食べてもらった人に知ってもらい、いつか地元に行きたいと思ってもらいたい。そう考えて工夫を凝らし、自慢の味をできるだけお待たせすることなく提供することはもちろん考えるのですが、それでだけではなくいかに地元を知ってもらうか、並んでいる人にどのようなおもてなしをするかを、一生懸命に考えた団体さんが結果を得ます。

多くの団体さんがそう考えて取り組んでおり、毎年様々なアイデアやユニークな取り組みが生まれます。お互いに切磋琢磨していくと、ベストテンには入らなくとも日常的なまちおこしの取り組みは、地元のメディアの方が応援してくれます。B-1グランプリ後に全国の情報発信がされるとともに、地元で頑張っている団体さんは地元で多くの取材を受けます。

B-1グランプリで提供されている自慢のご当地グルメは、数百円の日常食。全国各地から観光客が訪れるというよりは、地元のお客様が多く訪れます。日常的にまちおこし活動を熱心にしている団体さんは、B-1グランプリへの取り組みを地元で紹介されるので、上位に入らなくとも観光客が倍増、3倍増することは珍しくないのです。

ひいてはそれが旅行情報誌や旅サイト、旅番組などに取り上げられることにつながり、たかが数百円のご当地グルメですが、地元に愛されるご当地グルメを食べに行こう、という方々が増えてきたのだと思います。全国各地の地元での活動で、地域の知名度が上がるきっかけがB-1グランプリであることが、結果的にB-1グランプリ自体の知名度も高めていくことになっているのです。